2008年12月30日

「DAYS JAPAN」 広河隆一氏 特別インタビュー

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「世界を視るフォトジャーナリズム月刊誌DAYS JAPAN 」。
既成のメディアでは報道されない硬派な情報を伝え続ける貴重な雑誌だ。
その編集長の広河隆一氏に、創刊のきっかけ、大手メディアに対する危機感などをうかがった。

DAYS JAPAN 創刊の経緯●DAYS JAPAN創刊のきっかけを教えてください

 元々私は自分がフォトジャーナリストであるとはあまり意識していなかったのですが、大手メディアの偏った報道のあり方に疑問を抱き続けていました。活動していくうちに、特にニュース報道のされ方がおかしいと思ったのが、9.11をきっかけにしたイラク戦争でした。

 戦争での取材において、大手メディアの取材は従軍取材ばかりです。従軍取材は実際に戦争している兵隊の視点で見ることになります。そして、従軍取材の現場のすぐそばに実は多くの被害者がいるのに、被害者の立場の取材はほとんどされません。ジャーナリストは、軍の広報部ではないので、被害者の立場に立ってきちんと何が起こっているか、伝えるべきなのです。

 フリージャーナリストの仕事は、大手メディアが取材しようとしない現場に存在する被害者の立場を報道することにこそ意味があるのです。

 そういった現状を取材する優秀なジャーナリストは世界中にいるのに、大手メディアが彼らからの情報を扱わないと痛切に感じたのもこのイラク戦争でした。

 こうした状況が、自分たちで雑誌を作る決意につながりました。
 スポンサーに頼らない状況の中、一定の影響力を持つためには、ある程度まとまった数の購読者が必要です。創刊の際、この雑誌に共感して必要としてくれる人と直接結びつくことができれば、絶対成功するという確信がありました。誌面ではっきりとカラーを打ち出し、街中にいるすべての人とではなく、同じ想いを持つ特定の人と結びつく方針にしました。
 そして今では全国各地、25,000人の読者がいますし、英語版も出して、海外でも知られるようになりました。しかし、まだ国家を動かすまでにいってないですし、5万から8万人ほどの定期購読者が理想です。


メディアへの危機感

●広河さんのメディアに対する危機感として何がありますか

 ニュースの価値は、「人々に知らせなければいけないものか」ではなく、「誰がそのニュースを買うか」によって決められてしまいます。そして、ニュースを配信して利益を上げたい企業は、「買われるニュース」(流通するニュース)を配信することになります。

 しかもニュースの大部分は、西側(ヨーロッパ、アメリカ)を経由して日本に入ってきます。そのため、ニュースの価値は西側世界の目で決められます。

 例えば、米軍がレバノンを大規模に砲撃した時、アメリカ政府は「テロリストの基地を破壊した」と発表しました。しかし後日、私がその現場に行ったら、それは誤爆だったことがわかりました。爆撃を受けたその村は「親米」で知られていて、多くの若者がアメリカに留学している場所だったのです。米軍の本当の目的地はそこから数キロ外れたところだったのです。つまり、事実確認も誤報を訂正することもなく、ニュースが流れている。結果、攻撃する立場からの取材ばかりで被害者の報道がないのです。

●メディアに政府や企業の圧力がかかっていると言えますか

 政府や企業の圧力がかかっていた時代から、近年、圧力をかけられる前に自ら規制する「自己規制」に変わってきています。

 例えば、アフガニスタンの難民キャンプの人々の写真を、日本の大手新聞社の記者が本社に送ろうとしたところ、「日本がこの戦争をバックアップしているのだから、水を差すようなことはするな」と指示されたそうです。このような自主規制によって事実が伝わりにくい傾向が報道機関の中で作られ、被害者の状況はますます私たちの元に知らされなくなってくるのです。

 テレビではスポンサーが出す広告の購買意欲を下げるような被害者の映像をあまり流しません。被害者を見せない報道によって、情報の受け手である私たちは被害が少ないのだと判断してしまう。戦争では必ず被害者がいるのに、その被害者の顔が見えない「きれいな戦争」報道になっているのです。
 また、「冷めた視点で戦争を伝えるのではなく、兵士を賞賛するような報道内容」に変貌しつつあります。

 戦争はメディアを利用します。ベトナム戦争では、その実態が報道されたことによって戦争の終結にも繋がった。アメリカはメディア戦略に負けたのです。その教訓のもとにアメリカは厳しい報道規制をするようになりました。

●日本と海外の報道の違いはありますか

 私が撮影した虐殺の映像を提供したとき、フランスではすぐに報道されたのに、日本ではずっと後になってから報道されました。


日本のオルタナティブメディアの
展望について


●日本には情報タブーが大量にあります。同時に、スポンサーをつけた大手メディアにそれを報道させることは期待できません。そんな中、国民の「知る権利」を守るためにも、情報タブーを打ち破るようなアプローチはありますか

 DAYS JAPANだけでなく、がんばっているオルタナティブメディアが増えることも一つの案です。例えば共感できるオルタナティブメディアとして、「自然と人間」がありますが、それでも、キオスクで購入できるほど、身近なものではありません。

●今後DAY JAPANはどう展開されますか

 DAYS JAPANとしては「信頼」「読みやすさ」に気を使うと同時に、写真提供者を支えるために、「経済的な保障」も不可欠です。DAYS JAPANに載せる第一線で活動する写真家を支えるためにも、見合った金額を払うことが必要なのです。

 情報にお金を出さない人が多いこの現状は決していいとはいえません。しかし、それでもどうにかこの現状を打ち破ることができるのではないかと感じています。それは、DAYS JAPANが支えられている定期購読者の反応から感じ取れることです。

 また、一般の人々の支持だけでなく、実際に多くのメディア関係者がDAYS JAPANを読んでいて、彼らに影響は何かしら与えているという手応えもあります。大手メディアの記者が自社で書けないことを書かせてほしい、と言ってくることもあります。また、「DAYS JAPANでここまでやっているのだから、うちでもやろう」と社内で提案することもあるそうです。

情報の受け手に期待すること

●私たちは情報の受け手としてどのようなことに気をつけたらよいのでしょうか

 想像力と猜疑心を持つことが重要です。加害者は必ず被害を隠し、見せたくない物を隠す性質があります。見せられたものだけを信じるのではなく、そのカメラの後ろにある状況を想像する必要があるのです。ニュースを見ながら「読み解く力」もつくメディアがあればいいのですが。

 また、悪い番組に抗議するだけではなく、いい番組だと思ったら恥ずかしがらずに番組に伝えたらいいのです。良い意見をもらった番組担当者はその方針でいけばいいのだと励まされます。それは、ジャーナリズム精神にのっとった、いいディレクターを守ることに繋がります。

 オルタナティブメディアを体感してみよう

広河隆一
(フォトジャーナリスト・ビデオジャーナリスト・DAYS JAPAN編集長)

43年 中国天津市に生まれる。二歳のときに日本に引き揚げる
67年 早稲田大学卒業後、イスラエルに渡る
70年 帰国。以後、中東問題と核問題を中心に取材を重ねる
82年 レバノン戦争とパレスチナ人キャンプの虐殺事件の記録で、
    よみうり写真大賞受賞
83年 同記録で、IOJ世界報道写真コンテスト大賞・金賞受賞
89年 チェルノブイリとスリーマイル島原発事故の報告で、 
    講談社出版文化大賞受賞
98年 「人間の戦場」(新潮社)で日本ジャーナリスト会議
    特別賞受賞
03年 「写真記録パレスチナ」(日本図書センター)で
    日本写真家協会賞年度賞受賞、土門拳賞受賞

お知らせ:広河隆一 監督作品
『NAKBA〜パレスチナ・慟哭の大地〜』
イスラエルが建国された1949年、70万人以上のパレスチナ人が難民となった。動乱の中東の確信にあるNAKBA。歴史が隠され続け、村々が廃墟と化し地図から消えていく情況の徹底的な取材によって、いま姿を現す。2008年春、ユーロスペースで。

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●初年度:12冊 8,700円(送料.税込み)
●2年目より:12冊 8,400円(送料.税込み)
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